鍵井靖章のかながわ海中紀行
神奈川の海・・・。

そう聞いて思い起こすのは、
「サーフィン」や「江ノ島」、「しらす」などなど・・・。
しかし、「海の中」についてはどれだけ知っているでしょう。
このたび、神奈川県在住の水中写真家の鍵井靖章さんが、
tvkウェブサイトにてその作品を展示する運びとなりました。
自ら神奈川の海を潜り、その知られざる”世界”を紹介します。
(毎週水曜日の更新です 目標!)

バックナンバー 1〜10,11〜20,21〜30

鍵井靖章鍵井靖章
1971年兵庫県生まれ。鎌倉市在住。 大学在学中に水中写真家・伊藤勝敏氏に師事し、水中写真を志す。オーストラリ、伊豆、モルディブでダイビングガイドを行う傍ら、水中撮影に励む。1998年、モルディブより帰国後、フリーランスフォトグラファーとして独立。現在は水中のあらゆる事象を精力的に撮影し、プランクトンからクジラまで、独特の世界観で水中の世界を写し撮る。2008年にイギリスで大型写真集「DEEP BLUE」を出版する。受賞歴、テレビ、ラジオ出演など多数。 公式サイト


2011/6/9 「アシカ日和」マガジンハウスより発売です

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40.家族で御蔵島のイルカと泳ぐ

2週間前の9月中旬、鍵井家4名は、遅い夏休みを過ごすために御蔵島に向かった。目的は、島の周囲に住むミナミバンドウイルカと一緒に泳ぐため。その年によって数の変動はあるようだが、約109頭のイルカが生息している。御蔵島へは、東京の竹芝桟橋を夜10:00に出航して、三宅島経由して、早朝の6時に到着する。夜、大型客船で出航すると、レインボーブリッジやお台場の夜景を眺めながらの旅の始まりとなる。これがなかなかロマンティクで良い。

今回の御蔵島の滞在は、ドルフィンスイムのガイド兼イルカ個体識別調査員、そして写真家でもある高縄奈々さんに大変にお世話になった。特に娘・りり子がイルカと泳ぐときは、ずっと手を繋ぎ導いてくれたおかげで、4歳の娘も見事、イルカと水中での対面を叶えることができた。りり子の感想は「寝ていて、可愛かった。また写真を一緒に撮りたい」と話してくれた。目を瞑りながら泳ぐイルカもしっかり観察していたようだ。

そして、6歳の息子・りうたは最初、ママと手を繋いでいたが、途中から、自ら泳ぎだし、ドルフィンスイムを楽しんでいた。彼はスイミングスクールにも通っていたので、すぐに水に親しんでいた。一度、2頭のイルカが、「一緒に泳ごう?」という感じで、彼目掛けて、急接近した。さすがにその時は、息子も慌て、急いで反転して、イルカから逃げた。海という、いつもとは勝手の違う環境で、自分よりも大きな生き物が急に迫ってくるのだから無理はない。「あのときは怖かった・・・」と彼の素直な感想も可愛かった。そして、素もぐりを繰り返して、イルカと楽しそうに泳ぐ私たちを見て、今度は、自分も素もぐりでイルカと泳ぎたいと、新しい意欲を見せてくれた。
私が水中撮影のホームグランドにしている葉山の芝崎海岸のタイドプールで、子供たちは、毎年、マスクとスノーケルを付けて磯遊びを楽しんでいる。しかし、フィンを付けて本格的に泳いだのは初めてだった。最初は「大丈夫かな?」と思ったが、親が思うよりも、子供たちは、何でも器用にこなしていく。

いつも私の海の写真を見ている彼が、その写真の世界と実際に触れてみた。ある意味初めての体験だったと思う。今夏、御蔵島で大切な家族の思い出を作ることができた。そして、自分たちの住む身近な場所で、このように野生の生き物と触れ合うことのできることにとても感謝する。

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39.第1回葉山フォトコンテスト

もう夏も終わりですね。
日本にいるときは、いつも早起きで、仕事場から聞こえる虫の音が朝の早いタイミングで一斉に鳴きだすのを聞いています。しかし、先週くらいからセミの大合唱も小さくなり、鈴虫の音色に変わってしましました。

今年の夏は写真展やコスタリカへの長期取材&短い連続取材に終わり、湘南の夏をほとんど感じることがありませんでした。ホームグランドである葉山の海にも、tvkの神奈川県の広報番組「カナフル」の収録で潜ったきっりで、とんとご無沙汰・・・。それ以外に、葉山に向かったのは、いつもお世話になっている葉山NANAさん主催の写真集「アシカ日和」の出版記念パーティー、そして、第1回葉山フォトコンテストの審査員としての参加と全然潜っていない・・・(汗)

その第1回葉山フォトコンテストですが、これが力作揃いで大変良いコンテストとなった。葉山のダイビングポイントは基本的に2つしかなく、潜水できる範囲としては、とても限られている。紀伊半島の串本や石垣島での海中フォトコンテストの審査も行っているが、それに比べると、まず、潜水できるエリアが小さいというだけで、ハンディはある。しかし、応募された作品は、葉山の海の特徴を良く捉え、しっかりと四季のある葉山の海を表現したものが多く見受けられた。限定された範囲だからこそ、四季という移り変わりを大切に、また、珍しいお魚や稀種ばかりに注目するのではなく、普通種でありながらも、その生き物をいかに愛らしく撮影するかなどに工夫が見られた。

そして、最終的には、「葉山の海に、どれほど惚れているのか?」がやはり大切になってくるのかしれない。グランプリを受賞された木村さんは、以前から葉山の海をしっかりと記録、撮影されてきた方で、彼に比べると葉山熱は私などまだまだ足元にも及ばない。もうひとり審査員である水中写真家の阿部秀樹さんと最後の最後まで、審査は名前を伏せて行った。そして厳選したグランプリンが、木村さんだったことを知り、「お見事!」と賞賛すると共に、同じ海を長年愛し続ける意味を教えて頂いた。

第1回葉山フォトコンテスト
http://www.photocon-hayama.com/
text:鍵井靖章

〜お知らせ〜
水中写真家・鍵井靖章の スライド&トークショー
鎌倉夜空のカシュ」(場所:鎌倉 日時:9月17日)

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38.さよなら 青カシュ

写真展「青い地球のカシュ」が無事に終了しました。
たくさんの皆さんの来て頂き、そして作品、空間を愛して頂きました。
本当にありがとうございました。

大切なご報告です。
今回の写真展「青い地球のカシュ」は、でこれまで開催されたキヤノンギャラリーSの展示会の中、歴代2位の来場者数を記録することができました。
本当にありがとうございました!

2位という、開催時には予想もしていなかった驚きの結果と、そして何よりもたくさんの皆さんに見て頂いたという喜びを今、ひしひしと異国の地(コスタリカ)の朝で感じています。

写真展の最終日の途中から、ヒューストン経由で何十時間も掛けてここコスタリカに着ました。そして今日も移動で、夕方から?30時間以上かけて、船でココ島へ向かいます。 そして、10日間の洋上生活が始まります。
今日もただの移動日ですから、ちょっぴり、青カシュのことを惜しみつつ、新しい旅に踏み出そうと思います!

約40日間、ほぼ休まずに品川通ってました。神奈川の海もまたちゃんと紹介しますので、今後ともよろしくお願いします!

8月12日 コスタリカにて。

text:鍵井靖章

展示作業中の会場内
初日には、荒俣宏さんも来てくれました。
こんな感じのギャラリー内です。

37.写真展「青い地球のカシュ」開催中

記事の更新が滞りました。すみません。
7月1日から品川キヤノンギャラリーSで写真展を開催しています。ギャラリーSは、 年間に6名の写真家しか写真展を開催できないアートスペースで、今回、水中写真家としては初めての展示となりました。

展示作品は、未発表作品を含めた90点で、実寸大(6m)のジンベイザメから、可愛いお魚の正面顔写真など、大小様々なパネルがたくさん並んでいます。展示コンセプトは水族館で、まるで海の中にいるような気持ちになると、大変好評です。大都会、品川に現れた天然の水族館として、夏休みの子供たちのもとても楽しんでくれています。1点を除いた全てがデジタルカメラで撮影した作品で、ここ4〜5年の間に撮影したものばかりです。

7月1日〜8月11日までの間は、tvk番組「カナフル」の葉山収録や三戸浜取材などの 近場ロケと週末を利用した山形県の取材だけで、海外取材などは一切入れずに、基本的にギャラリーに毎日、在廊しています。会場で色んな方が私の写真をどのように感じくれているのか?などダイレクトに感想を聞ける良い機会です。展示作品選定やレイアウトなども最終的には自分で決定しました(空間演出にはkotenhitsの河田孝志氏の協力をお願いました)。私もずっとギャラリーに居るわけにはいきませんが、可能な限りギャラリーにいることは、作家としての義務だと考えています。

今年、私は鎌倉・湘南の夏をまだ感じていません。 きっと、私にとって短い夏になりそうですが、充実しています。 ありがとうございます!

鍵井さんのツイッターで在席チェック!

text:鍵井靖章



番外編:写真展「青い地球のカシュ」見物記

暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
7月9日、品川のキヤノンギャラリーSで開催で開催された鍵井さんの講演会に行ってきました。

会場のキヤノンギャラリーSについてまず目にするのがいっぱいに引き伸ばされた海中写真。

ゆらゆらと揺らめく海面からの陽光が不思議な浮遊感を感じさせます。

さて講演会は鍵井さんの写真をプロジェクターで映しながら撮影時のご苦労や工夫を話していましたがその口調が面白おかしくて会場は笑いに包まれました。

新刊の「アシカ日和」にはサインを求めるたくさんのお客さんで盛況でした。

個展は8月11日まで。時折、会場に鍵井さんもいらっしゃるようですのでお近くの方はぜひ、ご来場下さい。

鍵井さんのツイッター

text:WEB担当

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36.「アシカ日和」と神奈川県内の講演会

7月1日、品川のキヤノンギャラリーSで開催される写真展の準備や、取材、講演会とかなり充実した日々を過ごしています。

さて、先日、発売となった写真集「アシカ日和」も好評発売中です!と書きながら、好評発売中というのは、便利な言葉だな〜と感心しています(笑)。 さてさて、「アシカ日和」ですが、私は様々なテーマで海の生き物を撮影しているのですが、 まさか、国内初の写真集のテーマが「アシカ」になると思ってもいませんでした。今回、お世話になったマガジンハウスの担当編集者のNさんが、「アシカ一本で行きましょう!」と言ったときは、ほんと驚きました。そして、話は、淡々と進んでいき、デザイナーのサイレントグラフィックスのお二人から最初の構成が届いたときは、これまた予想とは違うグラフの展開に驚きました。私の性格上、どちらかといと、バン!バン!という写真の展開を想像していたのですが、実際はそうではなった。最初、戸惑いも覚えましたが、打ち合わせなどの会を重ねると、段々とデザイナーさんが組んでくれた展開がテンポよく自分の中に入ってくるようになりました。

そして、今、出来上がった写真集「アシカ日和」が隣にあるのですが、かわいですね。日日常のふとした瞬間に開けて見てみたくなる写真集です。テンポ良くアシカの持つ愛らしさやひょうきんさが伝わってきます。「アシカってこんなに可愛い生き物だったの!」とよく言われるのですが、ほんと、そうなんです。あまり日本人には馴染みのない生き物ですが、たくさんの表情があって、オス、メス、子供の様子に親近感を覚えますよ〜!プレゼントにも最適なので、是非〜

text:鍵井靖章

【出版・講演会のお知らせ】
タイトル「アシカ日和」
写真・文 鍵井靖章
発売 6月9日 発行 マガジンハウス 定価 1500円(税別)

パパラギダイビングスクール25周年企画 鍵井靖章講演会
日時:6月26日(日)18時20分〜19時 著作本の販売、及びサイン会19時〜20時30分 講演
場所:藤沢市民会館 第2会議室
参加費:NPO会員 1200円/一般1500円
地元・葉山、鎌倉沖の海のお話しもスライドを交えてお話させて頂きます。

パパラギダイビングスクール25周年企画 鍵井靖章講演会 
日時:7月6日(水)  18時20分〜19時 著作本の販売、及びサイン会
19時〜20時30分 講演
場所:神奈川公会堂
参加費:NPO会員 1200円/一般1500円
地元・葉山、鎌倉沖の海のお話しもスライドを交えてお話させて頂きます。

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35.現在、コモドの海で撮影中!

5月21日〜6月4日まで、インドネシアのコモド諸島海域で、撮影を行っている。コモド諸島は、世界自然遺産にも登録される手付かずに海が広がっている。

コモド諸島の海の魅力は何と言っても、混ざり合う異なった海流が構成する豊かな海中景観と生物だ。コモド諸島は、北のフローレス海(太平洋)と南のインド洋が密接する海峡エリアで、両海に生息する海洋生物を一度の旅で出会うことができる。

北部エリアは透明度が高く、無尽の魚群や大物との遭遇が楽しめる。代表的なダイビングポイントは、「キャステルロック」や、「クリスタルロック」。水中にそり立つ大きな根の周囲には、大物、群れものが集まっている。クマザサやウメイロモドキが中層で大きな群れをつくり、それを狙って、ロウニンアジやカスミアジの編隊、イソマグロなどが徘徊している。中型の捕食魚たちが、群れに襲い掛かるとき、水中でドン!という爆音が響き、海が弾けるような印象を持つ。潮の流れを求めては常に魚群が集まるポイントの最大のパフォーマンスだ。また、ナポレオンやマダラトビなども大物もそこここで見られることができる。そして、ハードコーラルもとても豊かで、テーブルサンゴ、エダサンゴなど様々なサンゴが混成した群棲が見られる。昨今、サンゴの荒廃が世界中の海から報告されるなか、コモドのサンゴを眺めていると、地球の本来の姿、原始の海の持つ美しさを教えてくれているような気がする。

そして、独特な雰囲気を持つ南部エリアは、西部オーストラリア沖で湧昇する深層水流の影響から、栄養分が高く、プランクトンで湧く豊饒の海でもある。代表的なダイビングポイントの「カーニバルロック」は、他ではまず見られないような海中景観が続く。オレンジ色のイボヤギ、カラフルなウミシダの群棲。ホヤ、カイメンの造詣の面白さなどなど、見るものを圧倒するインパクトがある。このポイントの魅力は、例えないようがない。お花畑や森のようでありながら、宇宙空間のような趣もある。きっと、この地球上にはここにしかない唯一無二の場所に違いない。

そして、今回は30枚以上のマンタの群にも遭遇した。私たちの存在など気にすることなく、手の届く範囲で1時間以上も優雅に泳いでくれた。コモドの海の宇宙に浮遊して、奇奇怪怪な生き物との遭遇を楽しむ。今回も忘れられない旅になりそうだ。

text:鍵井靖章

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34.新しいルール

震災以降、海について真摯に考える機会が増えた。
海での撮影が主な仕事の私にとって、汚染水の放出、また漏水は本当に心が苦しい。近隣諸国を初め、世界中の国々の方に多大なるご迷惑を掛けた。海には、国境がない。そして、何よりも海の生き物はありえないくらいに汚染され、傷ついた。申し訳ない。

もうこれ以上、彼らに迷惑を掛けることはできないと、私は「新しいルール」を自分に課した。それは、これからの海での撮影の際に、一切着底はしないというものだ。
水中写真の撮影の場合、なんとなくイメージで海の中で浮きながら撮影しているようなイメージかもしれないが、実際は岩場に身体を固定したり、砂地の上にひざまずいたりして撮影することが多い。

海の中はうねり、潮流があるので、身体を固定しないと、泳いでいるお魚や小指の爪ほどのサイズのお魚の撮影はなかなか難しい。しかし、何気なく着底した場所には、カイメンやイソギンチャク、エビ、カニの幼体などが付いていることもある。できれば、そのような生き物たちを踏まずに撮影を続けたい。

南の暖かい海でのダイビングならば、薄手のウェツトスーツに身を包んでいるので、浮力コントロールも多少簡単だが、寒い海でのダイビングは、海水が浸入してこないドライスーツを着て、インナーには分厚い防寒着を着る。そして、腰に10キロくらいのウエイトを巻くのだが、その装備での浮力の確保はなかなか難しい。高度なスキルが必要となる。

昨日(5月13日)に葉山の海で、「新しいルール」での撮影を試みた。正直、小さな生き物のピント合わせはとても難しい。が、できないものではなかった。米粒大のダンゴウオも撮影したが、構図を考えながら、シャッターを押すこともできた。ブログでこの「新しいルール」を宣言して後、多くの方から、共感のメッセージを頂いた。

海と生き物たちと私の新しい関係の始まりだ。

2週間続けて、投稿することができませんでした。すみませんでした。
引き続き、書いていきますので、よろしくお願いします。

text:鍵井靖章

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33.岩手の海に潜る使命

4月3〜5日に講談社「週刊現代」編集部より取材の依頼があり、東北・岩手に向かった。依頼内容は被災地での水中撮影。被災地の陸上の様子は、連日の報道などで知られている。しかし、「海の中はいったいどうなっているのか?」というものだった。

最初の2日間は、八戸に近い北三陸地方の八木南港からチャーターした漁船で出港し、久慈市や水沢の手前、おもと小本川脇の切り立った崖下の下で潜った。この辺りでは漂流した転覆船の下などで撮影した。頭上は行方不明者一斉捜索中の自衛隊のヘリが飛び、海中では、ピーン、ピーンとソナーのような音が海中一面に響き渡っていた。水温は6.5度、正直、寒さは全く感じない。

2日目は、港湾整備が進む宮古湾を中心に潜った。大きな作業船が往来している湾内では大きながれきはもうほとんど見られなかった。防波堤沿いを潜っていると、今回、全ダイブのサポートをお願いした葉山NANAの佐藤輝さんが、こちらにライトを振って合図を送っている。近づいて彼の指差す場所を見ると、桜色した小さな粒が見えた。輝さんが「ダンゴウオ!」と水中で声を張り上げる。分厚いアイスフードを被った私にも、その声は、はっくりと聞こえた。撮影を始めて数カットを撮り終えると、ふあっと浮いて、鉄板の上に移動した。何かメッセージを発信しているのか?と思った。

今回の撮影の依頼を受けて、私なりの目標というか、使命というものがあった。それは、水中に残る家屋や日常生活用品などの撮影と並行して、生き物の捜索と撮影だった。

カメラマンの仕事として、今の海中の惨状をしっかりと記録する。この国に生きる者として、少しでも長期的な復興に携わる責任を感じている。今回は、取材の依頼を頂いたということで、私は現地に赴き、自分でしっかりと今の状態を刻みこむことができた。

そして、個人として、どうしても海の生き物たちを撮影したかった。私は、海の生き物のお陰でご飯を食べている人間だから、ここで何とか恩返しがしたい、という気持ちが強い。もう少しだけでも、海の生き物の目線に立つ人間がいても良いと思う。「こんな状況の中でも、きっとお魚たちは、生きている。」「被災した状況の中でも、海の生き物たちはしっかりと生きている。」ということも報道したかった。

海の中は、みんなが覗ける世界ではないので、どうしても全ての事情の受け皿になることが多い。これ以上、陸上(人間生活)のつけが回ったり、汚される前に、生き物たちはちゃんと生きているということを証明しておきたかった。そして、海中で生き物を見つけるたびに、今回、被災したこの海を愛してガイドしていた友人、仲間の顔、そして漁師の方々、広くは、将来の子供たちの笑顔まで思い浮かんだ。

ダンゴウオは、北の海のアイドルでもあり、私たちを笑顔してくれるので、復興のシンボルのようなお魚だと思う。被害の大きかった宮古市湾内で出会えたことは、被災した海からの、何か大切なメッセージのように思えならない。

text:鍵井靖章

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32.カオラックにて

先週、3月21日まで、タイのカオラックという町で取材していた。
2004年12月26日にスマトラ沖地震が発生し、インド洋大津波が起きた。カオラックはその最も被災したエリアのひとつだった。
今回の東日本大地震の後、日本がとても不安定な状態のときに、出国ということだったが、私の実家のある兵庫県に家族を帰省させ、予定されていたスケジュールを行った。少し取材を控えようとも思ったが、7年前の津波によって被災されたカオラックということもあり、少し繋がりを感じ、現地に赴いた。

カオラックの町は、被災地としての痕跡はなく、タイ有数のリゾート地として、復興していた。確かに津波で家族を失った子供たちへの支援などの協力は続いているが、一介の観光客はほとんど知る由もない。

海中世界は?というと当たり前のように復興していた。7年前のスマトラ沖地震から2ヵ月後に、被災したスミラン諸島の海に実際に潜った。大きな赤いウチワのようなオオイソバナは倒れ、サンゴも崩壊した場所があった。しかし、現在は津波以前と変わらぬ鮮やかな世界が広がっていた。

ただ、ひとつだけ大きな問題に直面した。それは、サンゴの白化現象だった。昨年、海水温が高い日が続き、サンゴが白化し、元々サンゴの群棲だった多くの場所が、今はガレ場となっている。スミラン諸島のサンゴは本当に美しかったので、その変化にはとても驚いた。かつて1998年に世界中で起きたサンゴの白化現象で、同じインド洋にあるモルディブは全体の90パーセントほどサンゴを失う壊滅状態だった。しかし、あれから13年たった今、完全ではないが、モルディブのサンゴ礁は復活しつつある。

人間として感じる10年はとても長いように感じられが、地球、自然の単位としては、瞬きをしただけの時間かもしれない。温暖化現象による白化現象といわれているが、白化現象自体が、元々自然界のサイクルのなかにあったものかもしれない。などと色々な思いを巡らせつつも、私は人間として行くので、長い年月をかけて、様々な復興、復活に携わっていく。

text:鍵井靖章

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31.復興まで

東北関東大震災で、被害を受けた被災地の皆様には、心よりお悔やみ申し上げます。 非被災地でも、輪番停電などで、ご苦労されている方も多くいらっしゃる事とお察し致します。 また、未だに解決のない福島原子力発電所の事故により、不安な日々を過ごしている皆様も、どうか心を強くもって、日々生活されて頂きたいと思います。

自分に何ができるかを色々と考えてみましたが、一番は、やはり写真でした。 今の気持ちを生き物たちの力を借りて、表現しました。

日本が復興するまで、泣きません。ネガティブな発想はしません。
復興まで、共に頑張ろうぜ!

鍵井靖章

最後に命を掛けて、日本を守ってくれている方々、 本当にありがとうございます。 心から、ありがとうございます。

 



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