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神奈川ビジネスUp To Date

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放送時間

毎週月曜日 21時~21時30分
  土曜日 23時30分~24時(再放送)

番組内容

いまの神奈川経済がわかる!
全国の上場企業1800社中、約200社が本社を置く神奈川県。
県内唯一の地上波テレビ局tvkが県内で活動する企業を中心に各企業の魅力的な取り組みやトップインタビューなどの経済情報をお届けします。

出演

内 田 裕 子(経済ジャーナリスト)

■プロフィール
大学卒業後、大和証券入社。社内TV放送のキャスターに抜擢されマーケット情報や経営者との対談番組に多く出演。2000年、財部誠一事務所に移籍し経済ジャーナリストとして活動開始。国内だけでなく新興国などの取材も多く、製造現場の取材、経営者へのインタビューを得意とする。
著書に大西 洋氏(三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員)との共著「三越伊勢丹 モノづくりの哲学」(PHP新書)。

10月2日放送分
ヨコハマトリエンナーレ 経済で探る現代アート

ゲスト
ヨコハマトリエンナーレ2017
コ・ディレクター 三木あき子さん

ベネッセアートサイト直島インターナショナル・アーティスティックディレクター
パレ・ド・トーキョー(パリ)チーフ/シニア・キュレーター、ヨコハマトリエンナーレ2011アーティスティックディレクターなどを歴任
第46回ヴェネチア・ビエンナーレ「トランスカルチャー」、「台北ビエンナーレ:欲望場域」、「チャロー!インディア」など、アジア・ヨーロッパで多くの企画を手がける


横浜市で開催されている「ヨコハマトリエンナーレ2017」を特集。3年に一度の現代アート国際展として2001年にスタートし、今年で6回目。タイトル「島と星座とガラパゴス」が表現するのは「接続性と孤立」。紛争・難民・移民やポピュリズム台頭など大きく揺れる世界を多様な作品で伝える。ゲストはアジア・欧州で多くの国際展を手がけてきた三木あき子氏。海外アーティストへのインタビューや、現代アートシーンの変遷から、イベントの持つ意義を探ります。


内田
三木さんは「キュレーター」という職業ということですけども、どういうお仕事なのですか?

三木
日本語ですと「学芸員」。美術館の学芸員という言葉をお聞きになったことがあるかと思うのですが、それが英語になりますと「キュレーター」という言葉になります。そのキュレーターという言葉のもとにあるのは「キュラトーレ」というラテン語ですけれども、英語で言いますと「テイク・ケア」、要するに「世話をする」という言葉が元々あるんですね。美術館で展覧会を企画する人たちのことをキュレーターとも呼びますし、また美術館に所属せずにフリーで美術の展覧会を企画するような人たちのことを一般的にキュレーターという風に呼んでいます。

内田
アートの国際展のキュレーターというと、やはりスターキュレーターのような、「この人がやっているのだったら」というような、名前が知られているような方たちがいる。それぐらい展覧会の成功というものに、キュレーターの力は大きい。そういう中で、今回のヨコハマトリエンナーレというのは、責任者といいますか、キュレーションという部分で「チーム制」をとったというのは前回と大きく違うところだと思うのですけども、これは何故なんですか?

三木
やはり「共に生きる」ということがテーマの一部としてもありますので。それと共に、大きな一つの声が響く時代ではないと思うのですね。

内田
ずっと三木さんが感じられている社会的な現象?

三木
現代美術の展覧会というのは、「作品を通して現代を考える」というものですので、それを考えたときにいろいろな意見もあり、それが関係性を持って、そしてできれば共鳴をしていくような形を展覧会として試してみるということもあり得るんではないかということで、今回、構想会議であるとか、共同ディレクターであるとか、展覧会を作るためのキュレートリアルチームであるとか、そういうようないろいろな人たちが関わって展覧会というのが成り立つような形になっています。

内田
今回のテーマが「島と星座とガラパゴス」ということで、可愛らしいテーマですけども、そこの奥に秘めている部分というのは全然可愛らしいものではなく、非常にジャーナリスティックなテーマを据えているという風に思いまして。例えばグローバル化に対してのポピュリズムの台頭であるとか、接続性、孤立であるとか、今の社会問題みたいなものを内包するようなテーマですけども、この狙いは何ですか?

三木
私としてはそんなにジャーナリスティックなものを狙ったつもりはなかったのですけども、そのタイトルを聞いたときにいろいろな立場の人がいろいろな発想が出来るようなタイトルにしたいというのがあったのですね。それがあって、ちょっと可愛くもあり、ちょっと現代美術展っぽくない、「島と星座とガラパゴス」っていうタイトルになったのですが。もう一つは、展覧会を作る、内容を作る立場として、私は「テーマは企画者側にとって本当にリアリティのあるものでないといけない」と思っているのですね。そうでないとやはり人に対して何かのメッセージを与えるようなものはできないと思っています。そういうことで考えると、「島」というテーマは、EUからイギリスが離れるというような状況というのは、個人的にも非常にショッキングな状況でした。ずっとヨーロッパの美術館で仕事をしてきましたので、私がヨーロッパで仕事をし始めた90年代というのは、歩み寄りをしていて、どんどん境界がなくなっていくような時代だったのですね。それがたったの20年ぐらいでこんなになってしまうというのが、非常にショックでしたし、右か左かとか、グローバル化かガラパゴス化かという、そういう二極対立で、短期のビジョンで、物事を見るような傾向が非常に多いと思うのです。しかしながら物事は見方を変えれば全然違う。まさにジョコ・アヴィアントさんの作品の前に私たちはいるのですけども、この作品のタイトルが「善と悪の境界はひどく縮れている」という、つまりその境界というのは非常に微妙なものなのですね。そうした今の単純に二極対立でものを考えるようなことに対して、そうではなくてもっと物事、状況を俯瞰的に捉えることであるとか、多面的に捉えることであるとか、そういうことが重要なのではないかと。作家の多くの人たちがそういうことに対して非常に危機感を感じていて、そういうことに対してもっと違う視点から作品を作り出そうとしている。そういうところが今回の展覧会の背景にはあります。

内田
ヨコハマトリエンナーレというような大きな規模で、テーマというものを据えて、それに合った作品をキュレーションする、集めてくるということは、すごく大変な作業なのだろうと思うのですね。

三木
3年とありますけど、3年間全てを準備に費やせるわけではないのですね。ですので、多くの国際展といわれるもので実質的に内容を決めるというのは1年とか1年半とかというケースが非常に多いですね。且つですね、やはりテーマに関連して海外に調査に出なければいけないですし、作家のところに行って「出てください」とコンセプトの説明をして、あるいは作品の借用の交渉もしなければいけない場合もありますし、例えば新しい作品を作る時に作家からプロポーザルを出してもらったとしても、お金が掛かり過ぎてできないという場合もありますし、コンセプトと合わないというケースもありますし、最終的にそこで折り合いがつくまで、やはりいろいろなやりとりをします。この竹も燻蒸しなければいけなくて、当然、美術館の中にそういうものを入れる時は全て燻蒸しますので。ただ今年はヒアリ問題で燻蒸業者が大変忙しくて、結構ギリギリまで本当に。燻蒸しないとやはりどうしても持ち込めませんから。

内田
消毒するというか、そういうことですね?  

三木
そうです。そういう危険性があるものは入れられませんから。ですので、そういういろいろな作業が出てきて、そして、作家がここに来て、実際この場所で作品を作る予定だったのが病気になってしまったとかですね。ちょっと言い方は悪いのですけども、生きている作家と一緒に仕事しているというのは生ものを扱っているのと同じですから。先ほどのキュレーターという、ケアをする、世話をするということでいうと、予想できないようなことも日々起こってきます。

内田
それぞれの方との契約、費用というのも、経済番組なのでお聞きしたいのですけども、差し支えない範囲で教えていただけると面白いと思うのですが。

三木
ヨコハマトリエンナーレということではないのですが、基本的、一般的な話として言いますと、全く謝礼がない場合もあります。ヨコハマトリエンナーレはそれほど高くはないですけれど、基本的にはお支払いするようにはしています。まあ気持ちということで、お支払いはしています。色々なケースによっていくつかパターンを決めていますが、例えばもう本当に一から新しい作品を作ってもらうとか、そういうのもまた違いますし、単純にある作品を設置してもらうだけだというのも、それはやはり作業量が全然違いますから、そういう形でも違ってきます。国によってもちょっと違う。国によって支払うということが慣例となっているところもあれば、払わないということが慣例であるという場所もありますので、一概には言えない部分ですね。


事業としてのアートイベント。アーティストとの交渉や展示を実現するための予算。ヨコハマトリエンナーレはどのような数字で動いているのか。その変遷とアートをめぐる環境の変化を探ります。


内田
三木さんは、過去、いろいろな企画展であるとか、国際展を成功させてきたというキャリアがおありになると思うのですけども、今回、数字で見るヨコトリということで、経済番組ということで表を作ってみました。この中で、数字の変化が見えるところも見えないところもあります。総事業費というのは変わってない?  

三木
そうですね。

内田
この展示製作費というものが、実際に作品をここに据えるために必要な費用ですね?

三木
そうですね、先ほどのお話に出ていたアーティスト・フィーであるとか、新作を作るための製作費であるとか、作品を持ってくるための輸送費であるとか、またその保険がものすごく掛かるのですね。ですので、保険代であるとか、いろいろなものを含めてです。それを考えますと、2017年は、やはりいろいろなことが高くなっていますので、それを考えても、もうちょっと上がってもいいかなと。

内田
「もうちょっとここは上がって欲しい」という三木さんのお立場の意見?

三木
そうですね、ええ。

内田
作品・参加作家数という風に括っているのですけども、ここの変化は是非ご説明いただけたらと。

三木
大きな理由としては、今回はテーマとの関係性もあり、一点だけというのではなく、一人の作家がいくつもの作品を出していて、どういう作家なのかというのが、できるだけその中でわかるような形になること。もう一つ言いますと、実は著名作家も多く入っている。マウリツィオ・カテランさんという、小さな顔がいっぱい出ていますけれども、あの方は今、絶筆宣言をされて、「アーティストを辞めました」といった人で、過去の作品であってもなかなか展示を出してこない。ですけども、今回はどうしても出してもらいたいということで、ミラノまで追いかけて、世界中を回っている人なので、もうどこで会えるのかという感じだったのですけども。

内田
もう追っかけみたいにして、どうしても出てほしいと?

三木
追っかけ、そうですね、それに近いかもしれないですね。どこで会えるかという。それを考えているときに、これくらいの数が予算的にも。

内田
妥当であると?  

三木
これ以上は難しいということと、もちろんスケール的なこともありますし。もう一つの理由は、お金とは関係ないのですけれど、できるだけ丁寧に作家と話をして展覧会を作りたかったのですね。そうするとやはり、これ以上増えてしまうと作家とコミュニケートが取れない。それができるのもヨコハマトリエンナーレが、まだ6回ですけど、されど6回ですよね。やはり継続してきているからこそ、毎回いろいろな取り組みが出来るのだろうという風に思います。

内田
作家を捕まえるのも大変、というくらい、もう国際展が世界中で飽和状態、作家の争奪戦、作品の争奪戦みたいなところになっていると思うのですね。あとは経済面で見ると、非常に世の中が金余り状態になっていて、モダンアートが投機の対象になっている。何か歪みが生まれているのではじゃないのか、ということを何となく感じている、その部分を三木さんはどんな風に見ていらっしゃるのか。

三木
美術館で大規模な展覧会などがあって、実は出そうと思っていた作品、出したかった作品がその展覧会に出ていますということになると諦めなければいけない。そういうことが本当によく起こっていますし、やはり現代美術が、ある意味投機の対象になっている。若い作家の作品なのに非常に評価額が高くて、保険額がとんでもない額が来たり、ということもありますので、展覧会を作るというところにも影響がないわけではないですね。

内田
国祭展をしっかりとやりくりしていくという、キュレーターの力、そういうことを成功させていく要素で必要なもの、魅力ある作品を集めることができるキュレーターの条件といいますか。

三木
一つには、作品を通して時代を読む力、これはもう絶対に必要だと思います。現代美術というのは、今アクチュアルな、今起きている時代のことですから、そこから乖離してしまった作品だと人の心を動かすことというのはできない。読み取る力というのは絶対的に必要だと思います。それといろいろな人たちと関わっていかなければいけないので、その人たちとコミュニケートができる能力、そしてその人たちを、ある意味動かすような人間力といいますか、そういうような魅力というのは常に持ってなければいけない。あとは予算のことは常に頭の中に入れてやっていかなければいけないのですが、しかしながら一方で、未来の価値であるとかそういうことを扱っているわけなので、そこで時にはリスクを犯さなければいけないこともあるのですね。どこかでこれは絶対的に必要だから、それが出るように、どこかで自分でお金を持ってくることができれば持ってきますし、できない場合もある。その場合、やはりどこかを下げて、そこにお金を出すとこともやらなければいけないですし。

内田
集中させる?  

三木
そうですね。

内田
国際アートのイベントがたくさん増える中で、横浜でトリエンナーレをやり続ける意義というのは?

三木
国際展というのは、現代美術のアーティストの、ある意味、他者の視点を通して今まで気付かなかったようなことを気付かせてくれたり、そういう新しい発見の一つのきっかけなのですね。同時にやはり横浜の町は開港、開国の場所で、今回「接続性と孤立」というテーマを提案したもう一つの理由としては、開港・開国の町で、それまで孤立していた場所が突然接続の場所に変わったわけですよね。ですので、やはり横浜でトリエンナーレというのが開催され続けるというのは非常に意味があることだと思いますし、本当に興味を持ってもらって、そして知ろうとするということを、作品に接することで体験してもらうことに繋がっていけば、という風に思います。



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10月23日の放送内容

鎌倉・奇跡の洋館再生 古我邸が刻む新たな歴史
神奈川経済の「今」を伝える情報番組。今週は鎌倉三大洋館の一つ「古我邸」を特集。1916年に別荘として完成以来、時を重ね続けてきた古我邸。長年非公開だった歴史的建造物は、2015年にフレンチレストラン、ウェディングの空間へと生まれ変わった。改修から運営を手がけてきたのは株式会社b.noteの新井達夫社長。オーナーや行政との交渉、資金調達などいくつもの困難を越えた再生事業。新井社長は「あの洋館に明かりを灯したかった」と話す。7年かかったという開業までのプロセスから、実現の本質を探る。

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