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神奈川ビジネスUp To Date

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5月8日放送分
「新たなパーソナルモビリティ 市場創造への挑戦」

ゲスト
WHILL株式会社
共同代表取締役 兼 最高技術責任者 福岡宗明さん


【プロフィール】
1983年 大阪市出身。
2008年 名古屋大学大学院工学研究科卒、オリンパス株式会社入社。
2009年 Sunny Side Garage設立。
2012年 WHILL株式会社設立。
2013年 WHILL,Inc設立。


スケー横浜のベンチャー企業が開発する「パーソナルモビリティ」を特集。65歳以上の人口が1/4を超えた日本。歩行困難者の増加に対し「脱・車イス」を掲げ、新たな移動手段を提供するWHILL。会社設立の経緯から、6月に発売する新モデルの開発秘話について伺います。

内田
私、今WHILLに乗っているのですけれども、動かし方を教えていただけますでしょうか?


福岡
まずは、このレバーを引いていただくと、これで電源オンになります

内田
はい、ブルーのライトが付きました。


福岡
もうあとは、このマウスを操作して、右に少し倒していただけると。

内田
はい、動きますね!ずいぶん滑らかに動きますね。




福岡
こういう形で、すごく狭い空間でも1回転して、Uターンできるというのが特徴になっています。

内田
なるほど。この開発をする段階で技術的に一番苦労されたところはどこですか?


福岡
やはりこの前輪になりますね。先ほどすごく狭い空間の中でもスムーズに運転できたと思いますけれども、その特徴を作っているのが、この前輪になります。これは「オムニ・ホイール」というタイヤになるのですけれども、横に動くのですね。

内田
普通、タイヤは前にグルグル回るものじゃないですか。これは横に動く?


福岡
横に動くときには(地面に)当たっているところだけが回るんですね。前に大きい段差があったときでも、このときには大きな前輪として動くことで段差を越えていくことができるのです。


内田
この工夫は「段差を越えるためにはどうしたらいいか」というところが大きい課題だったわけですか?


福岡
そうです。いわゆるハンドル付きの電動車イスと呼ばれるようなものだと、タイヤが大きいから段差を越えていけるのですね。だけど、あれだと(カーブして進むことしか)動けないんですね。このタイヤを使うことで、その場で回転することができる。

内田
もうこれがすごく大事。大きな違いですね。


福岡
はい。

内田
WHILLという会社は誕生してから、何年になるのですか?


福岡
もうすぐ5年になります。

内田
どういうきっかけで、この会社は生まれたのですか?


福岡
最初は本当にボランティアグループのようなもので、大学の同級生と集まって作ったという、そこから始まりました。

内田
どういう話がその中で生まれたんですか?


福岡
自分たちで「何か新しいもの作ってみようよ」ということをやっている中で、リハビリテーションセンターに行く機会がありまして。そこで、あるユーザーから言われた言葉がすごいきっかけになりました。

内田
それはどういう言葉だったんですか?


福岡
「100メートル先のコンビニに行くのをあきらめる」と。「なんでなんだろうな」という、そういうところから始まりました。

内田
そのきっかけとなった「100メートル先のコンビニエンスストアにも行けない人たちを行かせてあげたい」というところから始まって車イスの開発ということになったのですけれども、最初はこういうWHILLのような形ではなかった?


福岡
全然違いました。やっぱり車イスっていろいろな障害があります。外に出たときに段差があるとか、悪路があるとか、乗り降りが大変だとか、そういった物理的な問題というものに僕ら最初に着目したのですけれども、いろいろ話を聞いていくと、物理的な問題というよりも、精神的な部分というのがすごく強いなと感じまして。

内田
まずそれを解決しようというところから、事業といいますか、活動はスタートしたということですか?


福岡
そうですね。そのときにすごくシンプルに「じゃあ、カッコいい車イスを作ろう」っていう。もう本当にすごくシンプルな話ですけれども、それを作ったら、みんな外に気軽に出て行くんじゃないかというところから、このプロジェクトは始まりました。

内田
今のWHILLの形になる前に、新興国市場にチャレンジするというプロセスがあったんですよね?


福岡
「すごく安い車イスがあったら、新興国でも自分たちで車イスを作ることができるんじゃないか」という話をしていたのですけれども、それはものすごく安くないと「やっぱり駄目だね」と。例えば500円くらいであっても、高いと言われるような、そういう世界だったので。それに関して調べていた中で、日本のリハビリテーションセンターに行く機会があって、そこでそういうユーザーの声を聞いて、方針を変換、というよりは、やっぱりここの問題というのを解決しにいこうっていう風に思えた。

内田
まず何から始めていったのですか?


福岡
一番最初に決めたのが、ちょっと変な話ですけども、「どこで発表しようか」という。

内田
モノがまだ全くできていない中で、「どこで発表するか」。なぜ、そこにこだわったのですか?


福岡
目標を先に決めないと、みんな日常の仕事の中で埋もれてしまう。それで「先に目標を決めよう」というので、最初すごくシンプルに「カッコいい車イス」というところを考えたのですけれども、見た目だけではなくて、イメージというのもやっぱり大事だと。「これは新しいカテゴリーの乗り物なんだ」という風にみんなに思ってもらいたい。そういう気持ちで東京モーターショーに「パーソナルモビリティ」として出展しました。

内田
そこでひとつ、みんなで掲げてきた目標は達成したわけですよね、出すというところは。そこから先の目標は決めていなかった?


福岡
なかったですね。

内田
それで、どうしようと?


福岡
当時、ある車イスメーカーの社長さんから言われた言葉があるのですけども、「これ、ちゃんと製品にしないと罪なことだよ」と。コンセプトだけ発表して、それを製品化しないというのはすごく罪なことで、みんなそれを夢に見て、待ってしまうと。

内田
なるほど。


福岡
市場ニーズがあるとかというよりも、「やんなきゃ駄目だ」と、何か使命感を。

内田
感じたわけですね。


福岡
そうですね。


東京モーターショーで大反響を得たパーソナルモビリティ。この段階では製品化の考えがなかったそうです。そして、同じものづくりサークルの3人がそれぞれ会社を辞め、2012年にWHILL株式会社を設立。翌年にはアメリカに本社を移転します。


内田
アメリカに本社を作ろうと。これは何で日本ではなくて、アメリカに行ったのですか?


福岡
これは二つ理由ありまして。反響としてアメリカの方からの反響が大きかったということと、やはり資金調達ですね。今、「ハード屋ベンチャー」という言葉がいろいろなところで聞かれるようになってきたと思うのですけれども、当時はもう本当になくて、日本で。日本で「ものづくりでベンチャー」というのは全くなかったし、誰もお金を出してくれなかったですね。

内田
出資は募ってみたのですか?


福岡
募ってみました。もう、いろんなところに話をしたのですけども。

内田
断念というか、「日本じゃ駄目なんだ」と?


福岡
そうですね、当時はそういう気持ちでアメリカに行きました。

内田
アメリカに行って、思うような、ある意味エンジェルとか、ベンチャーキャピタルであるとかという、繋がりというのはできたのですか?


福岡
アメリカでいろいろなところで話をしていくと、その当時、特にアメリカ西海岸、シリコンバレーといわれるエリアでは、「ハード屋ベンチャー」、「ものづくりベンチャー」というものが、どんどん主流になってきていたのですね。そこですごく投資家の人たちも話しやすくて、「君たちのはすごく可能性があるから」というので、お金を出してくれることになった。それが入った後、日本の投資家の方も。

内田
よくあるパターンですね。肝心なのは、「商品を作る」ということですけれども、これはどうでしたか?


福岡
モノを作るという点では、日本の方が圧倒的に良くて、日本で開発していたのですけれども、ユーザーからのフィードバックという点ではアメリカの、シリコンバレーというエリアはすごく良かったと思います。「君たちの“カッコいい”とか、“デザインを重視する”というコンセプトは、こういう人たちに受けるだろう」とか。そういうコンセプトの部分でフィードバックをもらえたのは良かったですね。

内田
「売れていく」ということがとても大切になっていくところですよね?販売をしていくということ。ここはどうでしたか?


福岡
いや、苦労しました、本当に。

内田
思うように売れなかった。これは何が原因だったのでしょう?


福岡
「良いものを作れば、すぐ売れる」という風に、そんな単純に思っていたわけではないのですけれども。モノを顧客に届けるまでには、本当にいろいろな人の協力を経てちゃんと届いているのだと、そこの人たち、販売に関する人たちという存在を、やはりもっともっと重要視しなければいけなかったと感じています。今は本当にいろいろな代理店さん、販売店さんと協力関係を結びながら販売することができて、数も伸びるようになりました。


パーソナルモビリティ・WHILLの魅力は、明らかに車椅子と異なるこの「デザイン」。若者だけでなく、確実に幅広い世代へと伝わっています。


内田
やはりデザインというのは大事ですね。


福岡
やはりイメージを引っ張る一つの、大きな要素だと思っています。モノだけではなくて、イメージというものを変えていきたい。そのためには見た目、外観のデザインというものに関して強いこだわりを持っています。僕らの特徴的な部分というのは「アーム」と呼んでいるのですけれども、斜め方向にラインを持っている。

内田
ええ。


福岡
横から見たときに斜めのラインができている。あのラインというのは、すごく大事にしていまして。イスというのは、必然的に後ろに倒れているようなラインになっている。これをなんとか前に倒れているような、人も含めて、物を使って表現できないかというところで、まっすぐ、スッと、前に出ているアームというものを作ったのです。これによって既存の車イスとは違ったイメージを持たせているという部分が強いのですけれども、ただその一方で、あのアームというものがあることで、設計が複雑になったりであるとか、そういった部分はずいぶん苦労しました。

内田
非常に面白いです。その「前に向かっていくデザインにしたい」というのは。


福岡
なかなか表現が難しいのですけども、あのアームがなかったら「イス」になるのですよね。

内田
確かに、あの白いラインがなくって、同じ黒の色で埋もれていたとしたら、「イス」ですね。


福岡
「イス」っぽくなっていく、動かないものに見えていくのですよね。「モビリティ」に見えなくなっていく。

内田
動かないものになる。面白いですね。あのラインがあることで乗り物になる。それは感覚的なものですか?


福岡
感覚的なものなのかもしれないですね。これに関しては本当にいろいろな側面から、僕らも、いろいろなものを作って、「これだったらどうだ、あれだったらどうだ」とやった結果、「やっぱりここのラインっていうのはすごく大事だ」という風に結論付けましたね、はい。

内田
やっぱりデザインの力っていうのは?


福岡
すごく力があると思っています。


6月に発売が決まった新モデル・WHILL「Model C」。今までよりはるかに軽量化され、また多くのユーザーが希望した「車載したい」という声に応えて分解が可能に。さらにIoT化され、故障なども遠隔でわかるようになりました。


内田
この「Model A」から「Model C」に開発を移行していくという際に、いろいろな工夫とか、「Model A」ではできなかった反省であるとか、いろいろなものが織り込まれていると思うのですが、これはどのようなものがありますか?


福岡
まず価格。

内田
やはり高すぎた?


福岡
満足いただいているお客さんもすごく多くいらっしゃるのですけれども、「もっと安くすれば使えるのに」という声は、常にいただいていました。

内田
コストダウンをするという工夫が「Model C」にはある?


福岡
そうですね。

内田
苦労した部分というのはどこですか?


福岡
まあ本当に、いろいろな苦労をしたのですけれども、例えば分解機構ですね。

内田
分解するということは、ある意味、弱くなるわけですよね


福岡
そこの「ガチャガチャした部分」を、いかにして耐久性を保ちながら、安全に使っていただく、でも簡単に分解できるようにしようと。

内田
今後「Model D」なのか「E」なのかわかりませんけども、「進化していく」というものを見据えると、どういう乗り物になっていくのですか?


福岡
そうですね、やはり「自動停止」だったり、「自動運転」というところに今後取り組んでいきたいと思っています。

内田
これからWHILLという会社がどういうものを目指していくのかということをお伺いしていきたいのですけれども。今、思い描いている部分で言うと、目標のところまで、何合目まで来ていますか?


福岡
まだ本当に、2合目3合目とか、始まったばかりと言っても過言ではないのかもしれないですね。やっぱり大きいのは、実際に「100メートル先のコンビニに行くのをあきらめる」ということを言っていらした方にWHILLという製品を届けて、「コンビニに気軽に行けるようになった」と言われた。僕らにとってはすごくそれが大きな一歩だったんですね。

内田
はい。


福岡
だけど、まだ「イメージを変える」ということころまでは至っていないと思っています。アメリカの人というのは、ちょっと足が悪くなったりとか、長時間歩くのが苦しくなったというときには、自然にモビリティを使うんですよね。だけど日本の方だと「いや、電動車イスに乗るほどではない」と。そういうときに頑張るんですよね。もっと自然に楽をして、外行っていいよ、行こうよと。もっと外で生活楽しもうよと。

内田
その人たちにWHILLが届き切っていないというのは、何がいろいろな壁があると思うのですか?


福岡
そうですね。

内田
それを乗り越えていくために?


福岡
60代、70代のお客様にWHILLの試乗を薦めたときに言われる言葉として、「まだ私はそれを使わない」という風に言われるのですけども、その感覚をどうやって消していくか、だと思います。「まだ」というのではなくて、もっと気軽に、「じゃ、今日使ってみよう」とか、そういう風に気軽に使えるようになる。

内田
WHILLというのは、これからどういう会社になっていくのでしょう?


福岡
僕らのやろうとしていることというのは、「世界を変える」ということだと思っているので、常に先陣に立って走っているような会社でありたいと思います。私たちが掲げているミッションは「全ての人の移動を楽しくスマートにする」。電動車イスを使っている方から、走れる方まで、そういう人、全ての人の移動を、楽しくスマートにしていきたいと思っています。



tvkのYouTube公式チャンネルの「見逃し配信」では取材VTRも含め、インタビュー全篇をご覧いただけます。(視聴無料です)

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5月1日放送分
「産業とインフラを支える 巨大で緻密な鋳造技術」

ゲスト
日本鋳造株式会社
代表取締役社長 鷲尾 勝さん


【プロフィール】
1958年 兵庫県明石市出身。
1982年 大阪大学大学院工学研究科修了、川崎製鉄株式会社入社。西日本製鉄所企画部長、第1原料部長などを経て、2012年 JFEマテリアル株式会社代表取締役社長に就任。
2016年 日本鋳造株式会社代表取締役社長就任。


スケールの大きさと緻密な品質管理・信頼性が求められる鋳造製品。低コストのアジア製品が勢いを伸ばす中、求められる競争力とは。京浜工業地帯の生みの親・浅野総一郎により創業されてから間もなく100周年を迎える日本鋳造・鷲尾
勝社長に日本の鋳造技術の可能性について伺います。

内田
鷲尾社長はJFEから来られて2年目ということで、「ここは強みだな」という部分と「ここは自分がもう一度競争力を持たせなければいけない」という部分と両方があったと思うのですが、それぞれ教えていただけますか?


鷲尾
まず強みはですね、とにかく歴史。今度2020年で100周年ですけども、それまでやってこられた「営業力」と言いますか、お客さんの多さ、そういう実績ですね。これは非常に大きなものがあると思いました。それと共に「商品開発力」。いろんなニーズに対応してものが作れる、そういう「企画力」、「対応力」。単に「鋳物じゃないか」と言われるのですが、そこにはかなり奥深い技術力と販売力があったという風に思いました。

内田
その鋳造という今の業界全体を俯瞰して語っていただきたいのですけども、今の日本における鋳造業というのは、どういう状況なのですか?


鷲尾
これはかなり厳しいですね。生産量も年々下がってきております。私どものお客様というのは機械メーカーさんであったり、自動車屋さんですとか、半導体メーカーさんだとか、そういうお客さんがあったりして、やはり日本全体の経済が上がってこないと、皆さん仕事が無いということなので。自動車屋さんも一部海外に行かれたりしていますし、機械メーカーさんも日本の競争力が昔ほど無いという意味で、仕事がどんどん減りつつあるのではないかと。その中で弊社がいただく、鋳物業界でいただく製品のオーダーも一部、海外品にシフトしています。そういう環境の中では、全体的に仕事がどんどん減ってく方向ではないかという風に思います。

内田
そういう中で、日本鋳造じゃなければできないものをやっていくということになっていくわけですよね。大手という意味では、日本を代表する鋳造メーカーであると思うのですけれども、イメージとすると、すごく大きいものを作っていく。橋、橋脚、橋梁に使うところの支承であるとか、そんなイメージですけれども、作っているものの流れと言いますか、変化というのはどうなのでしょうか?


鷲尾
それこそ自動車用部品、それから造船用部品、もちろん橋の支承もですけれども、その中で弊社でしかできないもの、あるいは特徴があるものという風に取捨選択されてきて、今の形が残っているわけです。今、大きく分けますと、そういうインフラ関係の鋳物と機械部品関係の鋳物。機械メーカーさんだとか、半導体の露光装置を作るメーカーさんに出している。比較的それは大きなものですね。

内田
本当に大きいインフラに使うものから、半導体というところのミクロなものを支えるものであるというところまで、用途が多様ですけれども、改めて「鋳物」というものの特性、鋳物じゃなければ「できないもの」を見ている方に理解していただきたいのですけど、鋳物の強みとは?


鷲尾
「できない」ということはないと思うのですけれども、いろんな形に近い形で作りますよね。元々、素材を塊から作ると削る量が多かったり、加工する量が多かったりするわけですけど、その製品の形に近い形のものを作って一部加工するということですので、そういう意味では工程が削減されるということだと思います。

内田
一つのものを掘り出して作るよりも、早く、確実にものが作れるというところ?


鷲尾
ということですね。

内田
鋳物でなければできないもの、もしくは鋳物で作った方がより良くなるものということを提案されてきたと思うのですけども、その中で今、グローバル経済ということで、各国でも様々な鋳物の技術というのがキャッチアップしてきていると思うのですけれども、日本鋳造でなければできない鋳物の技術というのはどういうものがあるのですか?


鷲尾
今、商品で一番宣伝していますと言いますか、いろいろ興味をいただいているのは、「低膨張材LEX(レックス)」というものです。これは非常に膨張が少ない。「鉄」は普通、温度上がると膨張するものですけども、膨張しないものを今、力を入れて開発しています。


製品の仕上がりを決定する正確な模型を整形し、周りを特殊な砂で固めてできる「鋳型」に、高温の熱で溶かした金属を流し込む「鋳込み」作業。冷却したのち、鋳型から取り出して、加工、組み立てや計測などを行い、最終製品へと仕上げます。こうした日本鋳造が誇る職人技とともに、今注目されているのが、独自の素材開発力。通常の金属は熱によって変形が起こりますが、日本鋳造ではこの変形を極限の精度で抑えた合金「LEX(レックス)」を開発。宇宙事業や半導体の製造、防衛など、過酷な環境にも耐える素材を自社で開発、付加価値の高い製品を作り出しています。


内田
鋳物は、溶けた鉄を流し込んで、型を作って、そういうシンプルなものに思えるのですけれども、いやいや、そうじゃないと?


鷲尾
もちろん、そういうシンプルなところもまだあるのですけど、さらにそこからいろいろ特性を、パフォーマンスを上げていくというような方向をこれから打ち出していくということだと思うのですけど。

内田
半導体を作る機械を支えるのに、LEXのような膨張しないという土台・素材が必要だという、そのニーズの意外さと言うか、そういうところに鋳物というものが求められるというのにちょっと驚いたのですけど。


鷲尾
やはりそういうことに意識の高い研究の方がおられることが一番大事じゃないかと思うのですよね。

内田
そういった複雑な合金の新しい配合をこれからもどんどんやっていくっていうことすか?


鷲尾
はい、そうですね。機械用部品、特に半導体関係の製品とかですね。それ以外で今、商品開発しております、低膨張材というのが非常に今後期待できるのではないかと思っています

内田
ここのニーズは伸びていく?


鷲尾
間違いなく、伸びてくると思いますね。

内田
どうしてその半導体の製造過程において、鋳物の土台というものが必要とされるのですか?


鷲尾
これはですね、大きなフレームの中にレンズがありまして、それで焼き付けるというようなことだと思うのですけども、その中でそういう形のものを作るとしたら、やっぱり鋳物でしかできないのでないかと。安定性もありますし、複雑な形に対応できるということだと思いますね

内田
つまり、複雑な形というものを実現するのが鋳物であって、その複雑な形を実現するのは、他の海外の新興国にできるかというとできない?


鷲尾
時間はかかりますし、やはり精度というのはかなりの差があると思いますね。単純な形の鋳物であれば、海外のメーカーでもできると思うのですけど、複雑な形になればなるほど、日本でやっていることが大事ではないかと思っています

内田
そこはさらに複雑になっていくのですか?


鷲尾
可能性はありますよね。半導体の世界というのは日進月歩ですから、これはいろいろなチェンジがあるのではないかという風に見ています

内田
最初言った対応力。


鷲尾
それに「迅速に」ですね。時間かけずに、迅速に対応するということが大事ではないかと思います。


新たな技術開発と革新が求められる鋳造業界。日本鋳造が見据える今後の成長戦略、そして未来の姿とは。


内田
日本鋳造さんにもまだまだ、「メイド・イン・ジャパン」としてずっと生き続けていただかなければいけないわけですけれども、そのためにはどういう会社にならないといけないと思いますか?


鷲尾
やはり仕事の仕方も、もう少し昔とは違った今風の、今の世の中に合う働き方をしていこうではないかと。まだ昔の働き方を継続している感じを受けます。

内田
例えばどういうところが変わっていくのですか?


鷲尾
ワークライフバランスも含めて、昔は「仕事ばっかり」というようなこともありましたけれど、今はそうではなくて、やはりちゃんとした生活をしっかりやっていって、かつ会社が成長していくというのが、これは無いものねだりかもしれませんけど、これは非常に、目標としては目指す方向だという風に思っています。

内田
そういう中で、ビジョンと言いますか、鷲尾
社長がこれから成長という部分の、ワークライフバランスを重視する上に付加していくものというのは何ですか?


鷲尾
製造力というものを上げていくところだと思うのですね。これはやはり、生産性であったり、品質であったり、それを仕事の時間でカバーするのではなくて、仕組みでカバーする、仕組みづくりだと思うのです。人の仕事の視える化ですね。どちらかというと弊社のような鋳物をやっている会社というのは、人の集約みたいな仕事がありまして、一体誰がどれだけ寄与しているのかというのが非常にわかりにくいのですね。これはある意味ビジュアル化して、その寄与度を明確にする。そうすると個人別に課題も出てくることもあると思うのです。

内田
それはなかなか面白そうですね。


鷲尾
世の中のメーカーでは当たり前のようにやられているようなことだとは思うのですけども、それを積極的にキャッチアップしてとらえていって、上げていくということだと思うのです。これはやはり環境の変化に迅速に対応していくというか、スピード力ですね。

内田
あとはフレキシビリティと、広く世界に向けて販路を広げていくという、そういうチャレンジもしていかれると思うのですけれども。


鷲尾
日本の中で仕事をしている限りはそういう見方はしないわけですね。やはり自分で初めて出て行って、ものを見て、いろんなものを感じて、初めてわかるわけですから、やはりいろんな人が海外に出て行って、いろんなものを感じてきていただかなければ駄目だと思います。そういうことを積極的にやっていこうという風に思っています。

内田
今までは日本の中だけで仕事が、良い意味でも悪い意味でも、やれていた。そこを大きく視野を広げていくのだと。


鷲尾
広げるということ、これはやはり将来に向けて、2020年で100周年になりますけれど、さらに100年、200年と生き延びて、続けていくためには必要なことだと思います。

内田
広く海外を見ていくことも必要なる中で、海外をターゲットにしていくとしたら、どこを見据えていらっしゃるのですか?


鷲尾
やはり先進国であるドイツとか、ヨーロッパであったり、アメリカであったりということですね。ここは地場でやっていらっしゃる鋳物メーカーさんもたくさんあります。そういう意味では、先端のモノというのは、それぞれの国で作っていらっしゃるということなので、そこに日本の品質の良いものを持っていけば、一部お使いいただけるお客様はいるのではないかと思っています

内田
LEXのような新しい、高機能なものにニーズがあるだろうというのが先進国?


鷲尾
そうですね。マーケティングを含めて、展示会に出してみたり、そういうことを繰り返しながら、これは出たからすぐ効果がでるものではないのですけども、こういうことを始めて、やはり何年もやっていく中で、段々増えていくものだと思いますので、日本鋳造でなければならないという「ご指名」をいただけるように対応していくことだと思います。品質も中国と変わらない、対応も変わらない、納期も変わらないという風になれば、それはもう「お前のところでなくていいよ」と言われてしまうわけで、そこにかなり差をつけて頑張っていくということだと思います。



tvkのYouTube公式チャンネルの「見逃し配信」では取材VTRも含め、インタビュー全篇をご覧いただけます。(視聴無料です)

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